再突入力学

Re-entry Dynamics

Re-entry Dynamics - 再突入力学

宇宙空間から地上への帰還や、火星表面への到達を実現するための、宇宙システムと惑星大気との力学的相互作用の解明に必要となるのが再突入力学です。再突入軌道の設計や、突入時の揚力誘導技術の研究開発と軌道上実証に取り組んでいます。

研究概要

Overview

地球周回軌道から地球大気圏への制御再突入技術はJAXAのUSERSやHTV、およびNASAのApolloやArtemisなど、これまでに多くの実証事例がある一方、質量数百kg級の小型宇宙システムでは未だ実現困難な技術となっています。小型宇宙システムの非常に厳しいリソース制約により、従来の再突入技術の小型宇宙機への適用は非現実的であり、小型宇宙システムが高精度に目標地点に帰還するための新しい再突入技術の確立が求められています。

この課題を解決する手段として注目されるのが、数百N級の高推力ハイブリッドスラスタです。ハイブリッドスラスタはその安全性と取扱性から小型宇宙システムとの親和性が高く、さらには酸化剤供給を停止することにより所望のタイミングで燃焼を停止することができるという特徴を有しています。これにより、推進装置のトータルインパルスの制御が可能となり、軌道離脱制御の精度向上が期待されます。一方、この高推力ハイブリッドスラスタの燃焼時に、衛星全体の姿勢を安定化させることが最大の挑戦となります。本研究領域では、高推力推進装置を用いた軌道離脱の際の軌道・姿勢連成制御技術の研究開発に取り組んでいます。また、軌道離脱後の大気圏突入時においては、宇宙システムと大気との力学的相互作用の解明が必要となります。本研究領域では、再突入カプセルのピンポイント着水・着陸を実現するために必要となる、高精度揚力誘導技術の研究開発に取り組んでいます。共同研究機関との協力の下、本研究開発成果の軌道上実証に向けて取り組んでいます。

研究事例

Research case

高推進力推進装置を用いた小型宇宙システムの軌道離脱技術の研究

自在に燃焼中断が可能なハイブリッドスラスタでは過去のUSERSでの固体燃料推進装置による軌道離脱制御よりも所望の再突入軌道への投入精度の改善が期待でき、最終的な投入精度・分散は主にハイブリッドスラスタ燃焼中の宇宙機の姿勢制御精度に大きな影響を受けます。

実際の宇宙機では機体の質量重心位置の設計値からの誤差やハイブリッドスラスタの推力発生方向の誤差等の不確定な要因が軌道離脱性能を低下させ、目標の軌道離脱精度の達成が困難となります。これを解決するため、本研究では小型宇宙システムの現実的なシステム要求に即した、ロバストかつ高精度な軌道離脱制御技術の構築に取り組んでいます。

また、軌道離脱時の姿勢制御に必要となるリアクションコントロールシステムの要求性能や、小型再突入システムの設計指針に関する研究開発にも取り組んでいます。地上評価に基づく実際の推進装置の特性を考慮し、数値シミュレーションによって軌道・姿勢連成運動を解析し、軌道離脱制御アルゴリズムの高精度化を実現します。

再突入カプセルの地上目標点への高精度揚力誘導制御技術の研究

小型な再突入カプセルは、Dragon宇宙船やARTEMIS計画のORION宇宙船等の有人帰還システムに代表される大型な再突入カプセルに比べて、大気圏再突入時の揚力誘導制御における空力係数や大気擾乱等の高い不確定性が大きな課題となっています。この課題を解決するため、本研究では、空力特性や大気特性といったモデル化誤差が大きい環境下における小型再突入カプセルの高精度運動制御技術の研究開発に取り組んでいます。

小型宇宙システムは軌道離脱制御誤差が大型宇宙システムに比べて大きく、大気圏再突入時のエントリーポイントにおける目標地点からの誤差分散もそれに応じて大きくなります。そのため、大気圏再突入時の揚力誘導による突入経路修正が、地上の最終目標地点への到達精度向上の鍵となります。本研究では、搭載電算装置による実時間積分を用いたフィードバック制御に加え、機械強化学習を用いた再突入カプセルのバンク角制御の逐次最適化を通した高精度ピンポイント揚力誘導制御技術の研究開発に取り組んでいます。

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