宇宙力学

Astrodynamics

Astrodynamics - 宇宙力学

宇宙空間で活動するためにまず最初に必要となる力学、それがAstrodynamicsです。太陽、地球、月、惑星、小天体の重力場の影響、および大気抵抗や太陽風等の外乱の影響を考慮し、宇宙空間における宇宙システムの絶対運動や相対運動の解析を通した、軌道設計技術、軌道予測技術、軌道制御技術等の研究に取り組んでいます。

研究概要

Overview

当研究領域は、三体問題や四体問題といった、太陽・地球・月など複数天体の重力が相互に作用する非線形かつ解析解の存在しない力学系を対象とし、その下での軌道力学的特徴の体系的理解に取り組んでいます。数値計算を用いて、周期軌道や準周期軌道、不安定軌道に付随する多様体などから、それらが持つ力学的性質を明らかにしています。これらの知見を基盤として、燃料消費の最小化や、ペイロード能力の最大化を実現する軌道設計手法の構築を進めています。

上記に加え、地球周回軌道における人工衛星の長期軌道予測、膜展開式軌道離脱装置を用いた軌道降下予測・計測データ解析、衛星コンステレーション軌道の解析、複数の衛星が関係するフォーメーションフライトや軌道上サービスに関わる相対軌道解析などの幅広い発展的研究に取り組んでいます。

研究事例

Research case

シスルナ空間の宇宙利用と軌道設計

近年、有人宇宙探査計画の進展に伴い、地球‐月系に広がるシスルナ領域、さらには深宇宙領域への関心が国際的に高まっています。特に、月周回長楕円軌道(NRHO: Near Rectilinear Halo Orbit)に建設が予定される有人拠点「ゲートウェイ」は、月探査や火星探査を含む地球以遠ミッションの拠点として期待されており、その実現により、従来よりも小型・低コストの宇宙機が深宇宙にアクセスできる環境が整いつつあります。このような背景から、地球‐月間を往来する宇宙輸送の需要は今後さらに拡大すると考えられています。地球と月の重力、そしてこれらの軌道運動と太陽による摂動がく合わさることで、シスルナ領域には自然な力学的流れ場が形成されます。当研究分野では、共鳴軌道や不変多様体、太陽潮汐力などの多体力学特有の構造を体系的に利用し、地球‐月間を効率的に往来するための戦略の研究を進めています。

さらに、月面探査に必要となる通信確保を目的とした、地球-月間のデータ中継衛星のミッション検討にも取り組んでいます。地球との通信条件や月観測条件を満たすための月凍結軌道の解析、更には地球やNRHOから凍結軌道へ遷移する際の燃料制約を考慮した最適遷移戦略の検討を行い、ミッション要求に応じた軌道設計手法の確立を図っています。

当研究分野では、理論的解析と実用的なミッション設計を融合させ、将来の深宇宙探査を支える軌道設計技術の創出を目指しています。

深宇宙ミッション軌道の最適化設計

本研究領域では、2体問題を基盤とした太陽系スケールにおける大枠の軌道設計技術を研究しています。深宇宙ミッションの軌道設計では、膨大なエネルギー消費やミッションの長期化の観点から、複数回の高推力噴射もしくは低推力推進、さらには複数フライバイ等のさまざまな要素を考慮し、最適な軌道を探索することが求められます。軌道設計は最適制御問題に位置づけられる局所解の多い連続変数を扱う問題でありつつ、深宇宙特有でもある複数のフライバイ天体の訪問順といった離散化変数を扱う問題でもあります。このような問題は、混合整数最適化問題と呼ばれ、真の最適解を発見するにあたり高度な技術や知見が必要となります。本研究では、以上のような特性を持つ深宇宙ミッションの軌道設計において、最適化・自動生成を行う汎用プラットフォームの研究開発、および深宇宙における運搬・科学調査・地球防衛を目的とした実問題への応用研究を実施しています。

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